小児科診察室より一言 No.4

小児科診察室より一言 No.4

梅の花が咲く季節が来た。毎年梅林を歩いて思うことだが、梅木の足元には梅の実がたくさん落ちているが、梅の若木は全くない。手入れも大変だと思っていたらそうでもないらしい。梅の実を放置していても梅は芽吹かないようだ。なぜか聞いてみたら、梅は中国生まれの外来種。だから日本の普通の土壌では相性が悪くて芽吹かないとのこと。相性とは、土の中の微生物つまり細菌の質が違うからだって。土壌は、積み重なった落ち葉を微生物が分解して栄養豊かになるらしい。植物が好む土壌の豊かさの質は様々で単に肥料をまくだけではうまく育たない。土壌中の微生物が大きくかかわっているのだそうだ。

あれ?何かに似ているぞ!最近腸の病気やアレルギーなどの発症に腸内細菌が大きくかかわっていると聞いたよ。元総理で有名になった潰瘍性大腸炎でも便の移植が有効な時があるらしい。それって植物の土壌改良と一緒じゃない?アトピー性皮膚炎って今でも原因がはっきりしない病気があるけど、ひどい皮膚炎の患者さんの皮膚にはとびひを起こす細菌が一杯着いていて、健康な人の細菌叢をアトピー性皮膚炎の患者さんに移すと病気がすごく良くなったという報告も読んだよ。また都会に多く農村部に少ないことは誰しもが認める事実、これも故郷を離れ都会に暮らすうちに腸内細菌たちが変わったのかな?植物が、肥料さえたっぷり播いていたら元気に育つわけではないように、栄養だけ考えて食事をしていても健康は保てない。どちらも微生物とうまく共存することが大切だ。

植物と人間とてもよく似ていると思わない?国により土壌の細菌叢が異なる。そしてそこで元気に育つ植物も異なる。地産地消という言葉御存知ですよね。ヨーグルトをよく食べる国の人たちは、長寿だ。日本も世界一の長寿国、しょうゆ、みそ、納豆やお漬物など考えたらいろんな発酵食品を食べている。そこにチーズやヨーグルトを食べると鬼に金棒の様な気がしてきた。日本人が今までよく食べていた発酵食品を取らずに欧米の肉食中心の食生活になって大腸癌が増えたのは単なる偶然?そんなことをあれこれ考えながら今年も梅林を歩いてみたい。